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「ね……ねぇ! こんなの、やめようよぉ……」
私は何度も彼に懇願した。けれども、彼の両腕は私の太ももを、がっちりと抱え込んで離さない。
スカートや前掛けは大きくめくれ上がり、私の……その、……し、下着が、前から丸見えになっている。
とはいっても、その状態は後ろの彼には見えないし、私にも難しい。
でも、お尻が丸見えの今の状態を想像するだけで、私の顔は今にも火を噴出しそうだった。
「すげぇな、耳まで真っ赤になってるぜ。まるでゆで蛸だな」
そういって彼は私の耳たぶを舐めたかと思うと、突然軽く噛み付いてきた。
「ひゃぁ!?」
体中に電流が走り、私は身をくねらせた。けれど、彼に抱きかかえられた身体は、逃れることはできない。
ゆで蛸みたいといわれたのは嬉しくないが、自分でもそのとおりだと思ってる。
でも、誰にも決して見せられないような姿勢、首筋に吐息が掛かるほど彼と密着した状態。
そんな状況で、紅くならない女の子なんて、いるはずないじゃない。
「……ど、どうしちゃったの?」
少し前から胸の中にあった疑問を、私はおずおずと口にしてみた。
普段の彼なら、こんな回りくどいことはせず、……すぐにでも私を押し倒しているだろう。
いや、その、別にそれがよかったというわけじゃなくて、ただ、いつもの彼らしくないのが気になっていた。
「……何でだと思う?」
彼が逆に耳もとで問い返してきたので、私は思わず目を瞬かせた。
聞き返されたことも、その内容も、私にはすぐには理解できなかった。
困惑する私の背中に、彼の大きなため息が掛かる。
「……どうせ俺は、堪え性も体力もねぇよ」
「? ……っ!?」
彼の呟きを受けて三秒後、私は跳びあがりそうになるほど驚いていた。
「な! な、な、なんでそれを!?」
といっても、今の私には首を動かすぐらいしかできない。
後ろを振り向くと、不機嫌そうな彼の顔が目と鼻の先にあり、慌てて顔を前に戻す。
彼の視線を背後に感じながら、私は数日前の彼女との会話を思い出していた。
――ふーん。まあ、あいつらしいっちゃらしいんじゃないの――
――それは、そうなんだけど……やっぱりもうちょっと情緒というか……――
――つまり、もっと焦らして欲しい、ってことか――
――いや、その……なんというか――
――でもなぁ、あいつ堪え性もなければ、体力もないしなぁ。実際のところ、終わるの早いでしょ?――
――それは……うん、そうなんだよね――
「……き、聞いたの?」
「……お前の親友がな、わざわざ俺に忠告してくれてなぁ。……人の頭に踵落としたついでだったけどな」
……そんな気をまわさなくてもいいのに……。
私は俯きながら、セルキーの女友達に向かって、心の中で呟いた。
「つーわけで、今夜はお望みどおり、……とことん焦らしてやるよ」
視界の端で、彼がにいっと笑うのが見えた。
「ま、まってよ! 私はそうゆう意味で――ふぁ!?」
弁解の言葉は、私自身の悲鳴にかき消された。
私の……大切な場所に伸びた彼の手が、下着の上からあ、アソコに触れている。
「……すげぇな、触っただけでもう、こんなんじゃねぇか。……そんなに感じてんのか」
私の前にかざされた彼の手は、蜜に浸したかのように粘ついている。
「そんなこと……はぅっ!」
そんなこと、自分が一番よくわかってる。
この宙ぶらりんの恥ずかしい姿勢で、私は数十分も耐えていた。
体中が熱を帯び、羞恥心と彼への期待が雫になって溢れてしまう。
彼に軽く触れられるだけで、背筋に強い衝撃を受け、自分のものとは思えない甘い声が響いてしまう。
「ふぅ……ひぁ!……ああ……」
彼は下着の上から私のアソコをなぞったり、割れ目に軽く指を押し当てる。
前からは彼の手がアソコを攻め立て、後ろからは服越しに大きくなった彼の一部が、お尻を押し上げる。
彼に挟み込まれるような状態で、くちゅくちゅという淫らな音と、私のあえぎ声、彼の荒い息が混ざり合う。
真っ白になりそうな私の頭の中に、彼の呟きが聞こえてきた。
「……いいかげん、もういいよな」
そして彼は私の下着に手をかけると――