*
「ほら! こっちだよコウスイ」
掴んだ君の手を背後で振り回しながら、セルキーの少女はずんずんと森の奥へと進んでいく。
森の中はいつもと変わらず、うっそうと茂り先が見えない。
だがこの密林の中で長年育ってきた君にとっては、かって知ったる庭であり、ここがどの辺なのかも漠然とわかっている。
だからこそ、彼女がどこを目指しているのか見当もつかなかった。
――今から少し前――
「ん? どうしたシャク・シィ。それにコウスイも」
君を引きずって森の奥を目指す少女を目に留め、彼女の尻尾がくるりとうねった。
「あ、やっほー、シェルロッタ。うん、ちょっと森に探検しに行ってくるね♪」
「探検……まぁ、いいが。……二人きりでか?」
複雑そうなシェルロッタに対し、シャク・シィは少し頬をふくらませた。
「だってさぁ、他のみんなは武器の手入れやら、練習やらで忙しそうだし。エリルとレンは勉強中だし。あの二人はいつもの通りだし……コウスイしかいないんだもん」
シャク・シィの視線の先に、シェルロッタと君も目を向ける。リルティとセルキーの少年二人が、仲良くうつむきながら正座しているのが遠くに見えた。
ため
息をついて、シェルロッタはシャク・シィに向き直った。
「お前は、何の為にコウスイの仲間になったんだ? というより、コウスイだって暇人ではないだろう」
シェルロッタの瞳だけが動いて、凍てつく矢尻で君の顔を射抜く。おもわず君は目をそらした。
「えー、いいじゃん、村にいるときはいつもシェルロッタやエリルがベッタリなんだから。たまには私の相手をしてくれても」
「なっ! 別にベッタリなど……」
真っ赤になって抗議するシェルロッタの顔が、少しずつ遠ざかっていく。
シャク・シィは君の手を引きながら振り返り、声を張り上げた。
「夕ご飯までには、ちゃんと帰ってきまーす」
笑いながら空いた手を振ると、まっすぐ森林に向かって突っ込んでいく。
「……今はもう、そんなことはないよ」
不意に彼女の声が聞こえた気がして、君は首だけで背後を見た。シェルロッタの姿はすっかり小さくなり、その表情までは見えなくなっていた。
「うん、この辺でいいかな」
そう呟くとシャク・シィは立ち止まり、君の手を放した。
彼女の体温になれていた手が、森の息に触れて冷たくなる。
そのぬ
くもりを逃さないよう、思わず
拳をにぎっていた。
シャク・シィは値踏みするように辺りを見回していた。だが、コウスイにはただの森の一角にしか見えなかった。
特に目立った何かがあるわけでもなく、特に他と比べて拓けているわけでもない。さっきまで通っていた場所と変わらない、幹の隙間に過ぎなかった。
ここに呼んだ理由を聞こうと、君は視線を木々から戻した。
そると突然、深緑の世界が別の一色に染まった。強い衝撃を受けて、背後の木に打ちつけられる。
「……んっ……」
まず最初に、声を出せないことに気づいた。次に、口が何か柔らかい物でふさがれていると知り、数秒をかけてそれがシャク・シィの唇であると気づいた。
……くちゅ……くちゃぁ……
「……ふ……んあ……」
むさぼるように、シャク・シィは自分の唇を君の唇に押しあて、小さな下を差し込んでくる。
水と、息と、肉の混じり合う音が頭の中に響いてくる。
「――ぷはぁ」
ひとしきり唇を味わうと、シャク・シィは大きく息を吐いて君から離れた。みずみずしい唇からは唾液がこぼれ、片方は彼女の整ったあごをつたわり、もう片方は君の口との間で糸を引いている。その糸が切れたとき、シャク・シィは肩を上下させ、立ちすくんでいた。
白い頬はいつも異常に鮮やかに色づき、濡れた唇からは荒い息が吐き出されている。潤んだ深紅の両眼には、とまどう君の姿だけが映っている。
「……ごめん、いきなり驚かせて」
彼女は君に対して笑みを浮かべた。
だがそれは、君が外の世界で見
た爛漫とした笑顔でも、村で子供たちとたわむれているときの楽しそうな笑顔でもない。
君だけしか見たことのない、彼女の笑顔だった。
両眼はとろんとして、焦点が合わず、体はこきざみに震え、今にも崩れ落ちそうだ。
「――でも、だめ。もう、がまんできないんだ――」
呟きながらシャク・シィはスカートの裾を掴み、ゆっくりとたくし上げた。
黒色に包まれた両足。その先の付け根の部分があらわになる。 彼女の息が、体の震えが一層激しくなる。
目の前にさらされたソコには、何もなかった。
本来あるべき下着などかけらも見えず、足の付け根からふとももにかけてしたたる雫も、その雫の源泉である大切な場所までが、君の前にさらけ出されていた。
「――森に入ったときからね……もう、こんなになってたんだ」
白く細い指をゆっくり動かし、ふとももから上へと這わせる。
「……コウスイと二人っきりになれたら……コウスイにしてもらえたら……そう思ったら、もう……止まらなかった……ッ!」
指が秘所にに触れると同時に、ビクンッ、とシャク・シィの体が跳ねた。
荒く息を吐きながら、少しずつ、秘裂に指を押しこんでいく。クチュッ、と音が鳴るたびに、蜜があふれて、太股を濡らしていく。
そうして、すっかり自分の愛液に染まった両手を、シャク・シィは目の前に、君に見せるかのようにかざしてみせた。
うつろに見つめていたかと思うと、ふいに、自らの口元へと運んでいく。
「……んっ…はむ……んあっ……」
べちゃべちゃと音を立てながら、彼女の上下の口から垂れた唾液が混ざり合い、その表情をより一層淫魔なものへと塗り替えていく。
ふと君は、さっきの彼女との口づけを思い出し、口元を押さえた。
今、シャク・シィに
かかる絵の具には、間違いなく君自身の
唾液も混じっている。
そのことに気付いたとき、まるで、君が彼女を汚したかのような錯覚に陥り、同時に体中が熱を帯びてくる。
何度も自分の指をしゃぶった後、、シャク・シィは危うい光を灯した目を、まっすぐに君に向けてきた。
「――おねがい」
唇からこぼれた蜜が、胸の上に落ちて流れていく。
「おねがい。もう、がまんできないの。君の……コウスイのお×ん×んを、私のお×んこに入れてほしいのっ……!」
一息に言い放つと、シャク・シィの体が大きく揺れた。おぼつかない足取りで君の方へと歩み寄り、前のめりに倒れそうになる。
反射的に抱きとめると、彼女の発する匂いが鼻孔をくすぐり、くらくらと脳を揺さぶられる。
「……」
シャク・シィは君の服を掴み、期待を込めた、それでいてひどく怯えたようなまなざしで、君を見上げている。
上気した肌の色。熱い吐息。こきざみに揺れる身体。押しつけられた乳房から響く心臓の音。
胸の中にいる少女、その動きの一つ一つが、アルコールのように流れ込み、理性を蝕んでいく。
すでに君の心臓も早鐘のように脈打ち、吐き出す吐息はどちらのものだかわからない。
「――あっ……」
思わず、右手でシャク・シィの胸に触れていた。年齢やあどけない顔立ちには不釣り合いな大きさの乳房は、服の上からでもはっきりとした暖かみと、弾力性を持っていた。
拒むどころか、逆に君の手に自分の手を重ねると、シャク・シィは再び唇を求め、今度は君もそれに答えた。
「……ん……ふぅ………もっと……」
豊満な胸を味わいながら、それを押さえつける布を無理矢理にずりおろす。ぽろん、とたわわな果実が二つ揺れる。
雪のように白い果実には、それぞれつん、とすました桃色のへたがついている。
ほてった実には、混じり合ってできた蜜がかけられ、得も言われぬ香りを放っていた。
それを片手でもみしだくと、布の上からとは数段違う弾力が、絹のような手触りが手のひらに吸い付いてくる。
「あっ!……おっぱい…そんなに…ひぁっ!」
圧倒的な存在感を持ちながらも、二つの乳房は触れる相手に合わせて自在に形を変える。
周囲を揉んだり、その尖端をこねるたびに、シャク・シィの息、嬌声が耳にかかる。
これだけでも、君には十分だった。だが、彼女には不満があるようだった。
「……やぁ……やだよぉ…おっぱいだけじゃいやなのぉ………早く……早く中にちょうらい…っ!」
ろれつが回らなくなり、今にも泣き出しそうなシャク・シィの顔を見て、君は一瞬動きを止めた。
獣が獲物を嬲るときのような、どす黒い感情がわき上がってくる。
このまま、もう少しじらそうか。そう、頭の片隅で思ったが、君自身、いきり立つそれを待て余していた。
シャク・シィの腰に手をやり、持ち上げる。彼女の背中を近くの木に預けると、片足を掴み、自分の肩に掛ける。
木と自分との間に彼女を挟み込むような形をとると、君は自分のベルトに手を掛けた。
「――わぁ」
そそり立つきみの肉棒を目にし、シャク・シィは感嘆の声を上げ、さっきまでのとろんとした瞳が、大きく見開かれる。
君は片手で彼女の太股を抱えながら、もう片方の手で自分の分身を秘所に押しあてる。
先端が割れ目をなぞると、君は一気に腰を突き出した。
――ぐちゅぁっ!――
「……っ! ふぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」
シャク・シィの蜜を含んだ喘ぎが、森の中に響き渡る。
だが、それは木々の合間に吸い込まれ、誰の耳にも届きはしない。
それほど人気のない場所なのだが、もはや二人は、他者の存在への危惧など持ち合わせてはいなかった。
……じゅっ……じゅっ……じゅっ……
「んあっ……んぐっ!………ひぁんっ!」
腰を一つ突くごとに、シャク・シィの上下の口から雫が噴きだし、たわわな乳房がちぎれんばかりに踊り狂う。
「いいよぉ! 気持ちいいっ! はぁっ……気持ちいいよぉ、コウスイっ!」
木の幹に何度も打ち付けられ、結合部からは湯水のように愛液を流しながら、シャク・シィは上下に揺れる。
無毛のソコは、初めてのときと変わらない強さで、一物をくわえ込み、貧欲に君を求めてくる。
……ぐちゅっ……ぐちゅっ……ぐちゅっ!
「ふぁぁっ! もっとぉ……コウスイもっとぉっ!」
空いた手でシャク・シィの乳房をもみながら、君は一心不乱に彼女の中へと突き進む。
目の前の少女をむさぼりたいという黒い衝動が、いまの君を突き動かしていた。
……ぐちゅっ……ぐちぁっ……じゅぷっ!
「んあっ!……ひんっ!……あぁっ!」
君にも、シャク・シィにも経験などほとんど無い。抑えることなど出来ず、ただただ衝動に任せてのぼり続ける。
「あぁっ……はぁ……ひぁ…っ!」
シャク・シィの膣は、さらに強く君を締め付け始めた。目の焦点が合わず、限界が近いようだった。
君もまた、せまりくる衝動を抑えきれなくなっていた。
互いに達すると同時に、君はそれを引き抜こうと考えていた。だが、そのことに感づいたのか、シャク・シィは髪を振り乱して懇願した。
「やぁ! 抜いちゃやらぁっ! ……いっしょに、コウスイといっしょにがいいのぉ!」
足に力を込めて君を引き寄せ、ますます強く君のを締めあげる。
君は一瞬躊躇したが、わき上がる衝動には抗えなかった。
速度を上げ、ぎりぎりまで引き抜いてから、一気に挿入する。
……ぐちゅっ!……ぐちゅっ!……ぐちゃぁっ!……
「はぁ!……あぁ!……んあぁっ!」
自分の動きに合わせてさらに激しくもだえる彼女の中に、君は肉棒のすべてを突き入れると、その膣に白い欲望を吐き出した。
――びゅっ! びゅるるるるっっっ!――
「んっ! ふあああああんっっっ!!」
シャク・シィの身体が大きくのけぞり、互いの呼吸が瞬間、止まる。
やっと息を吐き出したとき、二人は抱き合ったまましばらく動けずにいた。
互いの吐息を感じながら、長いこと絶頂の余韻に浸っていた。
不意にシャク・シィの四肢から力が抜けた。君はとっさに支えることもできず、彼女は木の根本に崩れ落ちた。
――ぐちゅっ――ごぼっ――
「ふぁ……」
だらしなく開かれた足の付け根から、愛液と精液の混ざり合った蜜が、泡立ちながらこぼれていく。
シャク・シィは身体を小さく震わせ、止まる気配のない泉を見つめている。
「……はぁ……はぁ……はぁ……」
ほてった身体にまとわりつく何種もの液体。それを拭うこともせず、木に寄りかかって荒い呼吸を続けていた。
しばらくして君の方を見上げると、いつもとおなじ、液にまみれてはいるがいつもの彼女と同じ、屈託のない笑顔を浮かべた。
そして、自分の隣に座るよう、弱々しく促した。
君が腰を下ろすとシャク・シィは肩を寄せた。首を伸ばすと君の頬に
軽く口づけをして、その胸に身体を預ける。
「……ありがとう…コウスイ。……すっごくよかった」
君が返事に窮していると、、続けてシャク・シィが口を開いた。
「……いきなりこんなことして、ごめん。でも、こうでもしないと……機
会がないんだもん」
君は彼女の表情を伺おうとしたが、色づいたうなじと、胸の谷間だけが目に飛び込んできた。つい目をそらす。
「ほんとうなら毎日、こうやってコウスイを感じていたいけど……外ではギルドのみんながいっしょだし、コウスイの村でゆっくりしているときは、シェルロッタやエリルがべったりだから……」
確かに、彼女と出会ったときから、集団行動が基本になっていた。あの時も、たまたま二人きりになっただけで、その後はまるで機会がなかった。
また、外の世界に行くことの多くなった今でも、村に戻れば何かと遊んだり、世話を焼かれたり、成人前と変わらない付き合いが続いていた。
君はまるで気にしていなかったが、こうしrてシャク・シィと二人きりになったのは、ずいぶんと久しぶりだった。
そもそも、彼女と出会ってから、それほどの月日があったわけでもないのだが。
「……ねぇ、知ってる? コウスイが村に帰るときはいつも彼女が出迎えるし、いつだって隠れて君に気をくばってるんだよ」
まるでお母さんみたいだね。そう呟いて、シャク・シィは軽く自分の腹部をさすった。
「――寂しいのはわかる……けど、ずるいよね。シェルロッタたちはあんなに長い間コウスイといっしょにいたのに。私はまだ、ほんのちょっとの間しか、いっしょににいられてないのに……」
君の腕に、彼女の細い指がくい込む。
「……私は、私はシェルロッタやエリルと比べたら、ほんのちょっとしか君を知らないかもしれない。けどね、あの子たちと同じくらい――」
言葉を切って、首を横に振った。
「――ううん、ちがう。私は、シャク・シィは、他の何よりもコウスイのことが好きなんだよ」
顔を上げてまっすぐに君を見つめる。その瞳にはもう、一点の曇りもない。
「……だから、コウスイが欲しくてたまらないんだ」
彼女のくせっけを優しくなでながら、君はふと、視線を周囲に向けた。
もうすっかり木々の間からは光が消え、代わりに根本から夜が吹きだ
し始めていた。
「……戻ろっか」
シャク・シィはすっと君から離れて立ちあがった。身体についた汚れを払い、衣服を整え始める。
胸に服を当て、後ろ手に紐を結びながら、シャク・シィは小さく舌を見せて笑いかけた。
「早くしないと、シェルロッタに怒られちゃうよ」
うなずくと君も立ち上がり、服を着直す。
二人とも来たときと同じ格好に戻ると、同じようにシャク・シィは君の手をにぎった。
「うん、行こ!」
ただし、君の目には彼女の後ろ姿ではなく、隣に寄りそう彼女の微笑みが映っていた。
「――おそいっ!」
村にたどり着く頃には、あたりはすっかり墨ととけ込でいた。
君の家にたどり着くと、家からからもれる明かりを背負って、しっぽ少女が仁王立ちして待っていた。
「夕飯までには帰る、と言ったのはどこのどいつだったかなぁ?」
シェルロッタは腕を組み、目元やら口元やらしっぽやらをぴくぴくさせながら、君たちを見下ろしている。
「いや……そのぉ、ごめんごめん。迷いはしなかったんだけど、奥まで行ってたら時間かかっちゃって……」
えへへ、と頭をかくシャク・シィから、今度は矛先が君に向けられた。
「まったく、お前がついていながら……ちゃんと御してやらないでどうする」
遅れた本当の理由を言うわけにもいかず、君は無言で頭を下げた。シャク・シィもそれに倣う。
シェルロッタはじっと二人をにらんでいたが、ふいにしっぽを下げて笑みを浮かべた。
「……まあいい、二人ともおかえり。他の子たちはもう食べ始めてる。お前たちも早く入るといい」
微笑みながらシェルロッタは背を向けた。ちりん、と鈴の音がして、彼女の姿は明かりとにぎやかな声の中に吸い込まれていった。開いた戸からもれる香りが、二人の鼻から胃を引き寄せる。
「うーん、おなか空いたぁ。早く食べよ!」
シャク・シィは駆けるように家の中へと飛び込んだ。ように見えた。
だが、実際には外と内の狭間で立ち止まり、くるりと君の方を向いて、それからまたすぐに、家の中へ飛び込んでいった。
途端にまた一段と騒がしくなり、シェルロッタの制止の声が聞こえてくる。
ほんの一瞬。それも、家の明かりを背にしていたにもかかわらず、君はシャク・シィの唇が発していた、音ならぬ声を聞き取っていた。
――大好きだよ――
本当に彼女がそう言ったのかはわからない。君はゆっくり歩き出した。
後手に取っ手を掴むと、そのまま明かりを塞いでいく。
それまで村に響いていた光がかき消され、再び深い闇が辺りを包んだ。
だがそれでも、家々の中には暖かい光が満ちている。
この光が自分の居場所であり、永遠に輝き続けるものだと、このときの君は疑いさえしなかった。
*