「……その言い方はどうかと思うけど」
「で?
まじでどうしたのよ?」
「いや、その……
この前、『ばれんたいんでぇ』って、いうのががあったよね」
「おお。
そういや、お前の村には今まで無かったんだっけか?」
「うん、たまたまレンちゃんが話したらしくて、
それがきっかけで、みんなやってみたらしいよ」
「お前、うちのメンバー以外にも、村中の女性陣、
妹分から、隣のお姉さん、ちょっとませた女の子から、人妻、未亡人(?)まで。
あらゆるヒロインからチョコもらってたよな」
「いや、それは……その……」
「あー、だいたい読めたぞ。
もうすぐ『ほわいとでぃ』だからな、
チョコのお返しを考えてたんだろ?」
「……あの後レンちゃんに言われたんだ。
『チョコのお礼は、三倍にして返さないと、
今後生きづらくなりますよ』……って」
「……そっか。
まあ、ぶっちゃけそーゆーイベントだからなー」
「……」
「ま、そう落ち込むなよ。
プレゼント目的だとしても、 お前から欲しかったんだろ?
みんなに好かれてるのは確かだよ、な?」
「……うん、ありがとう」
「よし、つまりは女性陣へのお返しで悩んでたんだろ?
俺に任せろ! 先輩として見事なアドバイスを…… 」
「あ、いや、みんなへのお返しは大丈夫なんだ」
「……へ?」
「ばれんたいんから二週間ほど経った頃、
……みんなの欲しい物リストが、
レンちゃん経由で回ってきたんだ」
「用意周到だな……けどちょっとまて、
じゃあ何で悩んでたんだ?
渡すもんは決まってんだろ」
「みんなへのプレゼントは決まったんだけど……」
「じゃあ、あれか。
原材料が『ふるけん』とか、
そーゆー難易度の話か?」
「そういうわけでもないんだ。
実は、一人だけリストに欲しい物が書いて無くて……」
「あれま。
一体誰だ?」
「……シェルロッタ」
「――ッ!」
「……」
「……」
「……」
「……シャルロッタ……の姉御?」
「……うん」
「………お返し?」
「………うん」
「…………
アレの?」
「…………うん、
アレの」
「…………」
「…………」
「……くそ、やっと忘れられたと思ってたのに。
また、口ん中がチョコずっぱくなっちまったじゃねぇか」
「……ごめん。
でも、ちゃんとお返ししなくちゃまずいだろうし」
「だな。
他の娘は、何か言ってなかったのか?」
「レンちゃんに聞いてみたら――」
*
「べ、別に私は、コウスイからお礼が欲しくて渡したわけではない!
ただ……他のみんなが渡しているのに、私が渡さないと……
ほら、コウスイもきっと気にするだろうし……ごにょごにょ」
*
「――って、言ってたって」
「あー、それぜったい期待してるな、姉御」
「……他のみんなも、そう言ってたよ」
「しっかし、アレはやばかったよなー。
まだ身体の中に、チョコが残ってる感じがするぜ」
「僕一人じゃどうにもならなくて、
シラ・ハにアカハラ、センだけじゃなく、
ウルズやフェルプルにも手伝ってもらったよね……」
「ちみっ子どもは、周りのやつだけでダウンしたけどな。
アカハラの奴はこまめにさぼるし、
最後まで食いきったのは、お前とセンだけだったんだろ?」
「……最後は、二人で鼻を半分こしたんだ」
「……そっか。
やっぱ、最後まで頭部が残ったのか」
「粉々に砕いて、やっとだったよ……」
「……」
「……」
「……とりあえず、アレについてはもう一度忘れよう。
で、お返しについて考えようや」
「……はい」
「で?
何か思いついたのはあるのか?」
「う〜ん……
女の子が好きそうな物とか、
なんとなくで思いついたのはあるんだけど……」
「……姉御が喜びそうかはわからない、か。
姉御の好きそうなもんとか、
今までプレゼントしたもんとか無いのか?」
「……昔は摘んできた花とか、
捕ってきた魚とか喜んでくれたけど……」
「……成人した後も、それじゃーまずいだろ」
「けど、シェルロッタの好きな物と言ったら、
そんなのしか思いつかないんだ」
「お前がくれるもんなら基本喜ぶだろうしなぁ、
逆にわからねぇか」
「……うん、かといって
いまさらみんなに聞くのも気が引けるし」
「……摘んできた花か。
そういや、さっきウルズ達と散歩してたとき、
面白いもん見つけたんだった」
「? 面白いもの?」
「おう!
そうだな、案外、姉御へのプレゼントにはいいかもしれないぞ。
ほい、これだ」
「?
これは……植物?」
「ああ、知らねぇか?
『
マタタビ』っていうんだ」
「……マタタビ?」
「マタタビ」
「……それって、あの、
猫が酔っぱらった風になる、といわれる?」
「はにゃ〜んで、
うにゃ〜んになるぞ。
いや、まじで」
「……いや、
いやいやいやいや。
これをどうしろと!?」
「ネコ科なら、キマイラでも効くらしいからな。
姉御もきっとヨロコぶだろうよ」
「いやいやいや、
まずいって!」
「まあ、あれだ。
そう珍しいシチュエーションでもないし、
主人公なら一度は通る道だ。がんばれ」
「シチュエーション!?
いや、そもそもシェルロッタに
効果があるとは限らないし――」
「効果無いと思うのか?」
「……」
「……」
「……多分、
効くと思います」
「どー見ても、
ネコ科だもんな、姉御。」