「一応もらったぞ。
……チョコレートと呼ぶには、カカオがクレイジーすぎたがな」
「……シャルロッタと五十歩百歩か」
「いや、二十五歩と、百五十歩ぐらいだろ。
もっというと、姉御は別次元だと思うぞ」
「同感だな」
「……で、お返しはどうするの?」
「この男が、そんな殊勝な事をするのか?」
「……残念だが、するようだ。
そのために店に頼んでいた品を、
ついさっき受け取ってきたところだ」
「え、まじで?
お前が!?」
「……おどろいたな」
「一体、何を注文したの?」
「ああ、これだ」
バサッ
「! こ、これは、この服は!?」
「色彩はすべて白一色!
きめ細かなレースがあしらわれ、
所々に目立たないながらも手の込んだ装飾が施されている……。
ま、まさかこの服は!?」
「……
ウェディングドレス……?」
「いかにも」
「ええええぇぇぇっっっ!!??」
「そ……それってつまりは、
プロポー……」
「いやいやいやいや。
そんな馬鹿な」
「そうだぜ、天下のアカハラ様が、
そんなロマンティックなこと、するわけがねぇ!」
「……クッ」
「は! そうか、そうゆうことかっ!
わかったぜ、コウスイ! セン!」
「なにがだ? シラ・ハ!?」
「……考えてもみろ、
オレらでもこんなに疑ってるんだ。
世界で一番、アカハラの被害を被ってるホクトが、
邪推しないわけがない!」
「た、確かに……」
「だがなんだかんだで、もっともアカハラを好いているのもホクトだ。
『もしかして、本当に……?』と、
期待せずにはいられないはずっ!
そんな乙女心が、あいつにもあるはずだ!」
「……なるほどな。
そうして葛藤しているホクトを見て、
楽しもうという腹か」
「……外道だ。
お前さん、じつに外道だぜ、アカハラ!」
「クックックッ……
十割方正解、といったところか」
「……全部だ」
「こいつといい、クロエリといい……
なぜうちのメンバーには、まともなユーク族がいないんだ」
「ま、あいつをいじってみたくなるのも、
わからなくはないけどな」
「……」
「さてと、
どうするんだ、コウスイ?」
「え!?」
「そーいやそーだ、
元々、お前のほわいとでぇでのお返しを、
どうするのかって話じゃねぇか」
「進展したとは思えんがな」
「あー、そうだな、とりあえずあれだ。
ここまでの内容をおさらいしておくか、一応」
「……うん」
「オレがいいと思ったのが、
マタタビ。
間違いなくとろーんで、はにゃーんだろ」
「だから、それが問題なんだってば!」
「自分が推薦したのはふかふかの
布団だな」
「……個人的にはいいと思うんだけど」
「……で、俺が持っているのは純白の
ウェディングドレスだ」
「……それをどうしろと」
「しかし……ろくなモノがないな」
「……なるほどな、
つまりここまでの話をまとめると――」
「まとめると?」
「マタタビでとろーんとしたシェルロッタが、
ふかふかの布団の上で、
純白のウェディングドレスを着ている。
という図になるな」
「――っ!?」
「――っ!」
「……」
「……そう考えればどうだ?
シェルロッタへのプレゼントも、
おのずと答えが出ないか?」
「ああ、なるほどなー、
やっぱお前は違うわ。
本物だよ、本物の変態だよ」
「……え? あ! えぇ!?」
「アカハラさん、
はっきり言ってやってくださいYO」
「あれだ、ぶっちゃけ
赤ん――」
「わー! わー! わー! ぎゃー!」
「……二人とも、悪のりが過ぎるぞ」
「いや、でも実際いいだろ?
手作りの品は喜ばれるし、
それが二人でのならなおさらだろ」
「いやいやいやいやいやいやいやいや!
もしかしたらとは思ったけど、そんな……
プレゼントとかそんな話じゃないよ! 全然!!」
「だが、間違いなくシェルロッタはヨロコぶぞ」
「ああ、ぜったいヨロコぶな」
「だ〜か〜ら〜っ!」
「……付き合いきれんな。
悪いなコウスイ、自分は抜けるぞ」
「ああ! 待ってよセン!」
「あ! そういやオレも用事があったんだ。
ま、あれだコウスイ、
とにかくがんばれ、むっちゃがんばれ。
オレの言えることはそれだけだ」
「いや、だからシラ・ハ! どうしそういうことに!?」
「さてと、俺もいいかげんコイツを渡してくるか。
……いいかコウスイ。プレゼントとは、
渡した方も楽しめるモノでなければならない」
「その通りだけど! 間違ってはいないと思うけど!
いや、それよりアカハラ!
君が変なこと言うから話が――」
「……」
「……」
「……本当にみんな行っちゃった……」
「……」
「……」
「……」
「……いや、
いやいやいやいや、だめだってば!」
「……」
「……」
「……なにやってんだろ、僕……」